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謎の温泉

このご時世に、連日満室記録を更新している温泉がある。
栃木県那須塩原に近い「芦野温泉」。

利用者の大半、いや、ほぼ100%が60~70代以上の高齢者だ。
周囲には何もない。娯楽施設はおろか、コンビニすらない。畑の中の、広大な敷地内にあるのは、ただ温泉だけ。

それに、温泉内も、浴場と宿泊棟だけ。カラオケもなければ、バーも、ゲーム機もない。ビールの自販機だって、やっと探して浴場のところに一つ。ひたすら温泉だけ。

あ、一つあった。歌振り座。歌舞伎座じゃない、芝居小屋。月に1回、公演がある。お客さんの手品や踊りや歌と、スタッフによる「瞼の母」。
出しものは毎回同じ。支配人演じる番場の忠太郎が「おっかさ~~ん」と呼んだら、客席から「は~い「は~い」「は~い」。
提灯とノボリと、おひねりと掛け声と、お弁当と、一種異様な熱気。

仕事を兼ねて一泊したのだけれど、謎は深まるばかり。食事は確かにおいしくてボリューム満点。けど、年寄りは全部食べられなくて、ほとんど残す。

温泉は確かにお肌スベスベ。薬草湯もあって、入ったら帰りは杖がいらないという。けど、ピリッピリッして、かさつく皮膚や粘膜は大丈夫なのか?

今回、取材したのは、毎月日にちを決めて、この温泉で落ち合い3泊するという3組の方々。うち特攻隊の生き残りのご主人(93歳)に話を聞いている間(これが最高に面白い!)、その奥さま(87歳)と、もうひと組のご夫婦の奥さん(79歳)と、10年前に未亡人になった女性(79歳)の3人は、ガールズトークに花が咲く。
残る一人のご主人は、傍らでひと言も挟まず、ニコニコと。

「90歳のとき、来年はもう来られないと言っていたのに、まだ毎月来てる」
「死んだら来れないもの」
「いや、死んでも来るだろう」

明日、近くの道の駅まで行かないかと誘われたが、お断りした。
近くって往復で5万歩…。

翌朝、隣でチェックアウトしていた60代の若い(!)ご主人が、来月の予約を入れている。いつも親子4人とは、果たしてどういう構成か。
その後ろで電話に出ていた受付嬢(?)が、月末の予約を断っている。
はとバスは毎日到着し、日帰り客もひっきりなし。


う~~ん、謎だ。
なぜ、これほどまでに、彼らを惹きつけるのか。
温泉に入るから長生きできるのか、長生きするから温泉なのか。
恐るべし、芦野温泉。

晩秋の出版にそなえて、私はたびたびここへ通うこととなる。
果たして、謎は解明できるのか?! 

この生死の淵すら曖昧な、深遠たる探求譚に、乞うご期待!


(おとな愉快団!「チーム三行半」こてちママ)

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