火事
夫の父は今年かぞえで88歳。人間、年齢だけでは判断できない、とこの父を見ていていつも思う。
なんたって、元気。一人で車を運転してどこへでもでかけてしまうし、畑仕事にも精をだす。
7年前に妻(夫の母)を亡くしてから、ますます元気いっぱい、我が人生を謳歌している。口ぐせは「息子が頼りにならないから、頑張るしかない」
父を支えている過去の栄光の話を「またか」と心のなかで思いながらも、感動しつつ聞くことが嫁である私の役目。
月に1回、様子を見にいくたびに繰り返される「行事」となっている。
3年前、同じ敷地のなかにある夫の弟の住んでいる家が漏電で火事になった。
1階を物置として使っていたので、漏電で、あっという間に全焼してしまったらしい。ちょうど、火災保険がきれて1週間目の出来事。
そのあと、義父はこつこつとまた庭に同じものを建てた。
義父は案外器用で、母屋以外は自分で全部建てている。以前と同じように1階は物置、2階は義弟の住居と事務所。
今回の火事の原因は放火。
知らせを受けてかけつけたが、一面、水びたしで黄色い警察のテープが張り巡らされていた。
1週間前にも敷地内の別の倉庫が放火されたばかりだという。
幸い、怪我人はいなかったが、物置においてあった軽トラック2台とバイクのガソリンが火事の勢いをつけたらしい。
警察の捜査がはじまり、義父に話しを聞こうにも「話が通じない」と警察から連絡があった。義父からも「警察は何もしない!」と怒りの電話が私に入ってくる。
家族のなかでは通じる会話が、どうも警察には通じないのが原因らしい。しかし警察の言っていることはもっともなことで、義父は訊かれたことに答えるのではなく、自分の話しばかりをしてしまっているみたいだ。
伝えたいこと、伝えなければならないことがごっちゃになってしまって、結局伝わらなくて、捜査自体も滞ってしまっているというのが、警察の言い分。
結局、通訳が必要になり、2台の電話で間に私が入り、通訳でようやく今日から捜査が始まることになった。
介護保険は払うだけで、使ったことがない、と自慢の義父だが、近くに住んでお世話ができないだけに、そろそろ一人暮らしの義父の今後を話しあわなくてはならない時期に来ているのかもしれない。
今日の義父の様子・・・。
今回全焼してしまった建物の屋根を修理中に屋根から落ちて肋骨を骨折中の義父は、電話の子機を枕元において、警察を負かせたと鼻息が荒い。
「負かせてどうするの?」と訪ねたら、「俺は警察は嫌いなんだ」
「好きとか嫌いの問題じゃないと思うよ」
「犯人は○○だってわかっているのに、見当違いの捜査をしている」
…今日から捜査始ったばかりなのに……。
(おとな愉快団!「チーム三行半」いっけい)






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