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入院して、困らせたのは誰?

友人のご主人が喉の手術をした。

お見舞いに行ったら、『沈黙治療中』という大きなステッカーが天井からぶら下がっていた。

私の友人は病室前の廊下に私をすぐに引っ張り出した。あわてて耳元でいう。

「忙しいのに、来てくれてありがとう」

「どお、ご主人のお加減は?」というと、彼女は、

「私が声を出すと怒るのよ」とニヤリとしていう。

「えっ、どういうこと?」と思わず聞き返すと、

「のどに負担をかけてはいけないので筆談しなさいって、お医者様がボードを貸して下さったのよ。で、最初はゆっくり、ていねいに文字を書いていたのよ。でも、そう長くは続かなかったの、あの人、イライラしてきてね」

「・・・」

「私がお見舞いの人と話すと、あてつけるなと乱暴に書くのよ、最初はその字も読めなくてね」

返事をしようにも、何て言っていいのだろうと私は思った。

「私ね、黙っているの、あの人には」

「・・・」

「そしてね、あなたのようにお見舞いに来て下さる人にはあの人に聞こえないようにそっと話すの」

「・・・」

「そして思ったのよ、夫婦喧嘩ってお互いに元気だからできるってね」

「・・・」

彼女の話は延々と続いた。

その日、病院の廊下で私が言ったのはお加減を聞いたのと「えっ、どういうこと?」のふた言だった。

3週間後…。

電話したらご主人が電話口に出た。

「その節はどうも。遊びに来て下さいよ。アイツが待っています。あなたが黙ってアイツの話を聞いてくれたことが一番のよかったことのようです。やっかいかけました」

彼はどこまでも“幸せな人”だ。

(おとな愉快団!「チーム三行半」u子)

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