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連載エッセイ<天国よいとこ 10>

新宿ステレオホールのダンサーが天国に行ったら?

★<新宿ステレオホール>は社交ダンスファンなら誰でも知っている名門ダンスホール、創立は50年以上前である。私は47年前から、このホールで踊っている。(先日も踊ってきた)ここに<Kさん>というダンサーがいる。私が25才のころ知り合った。たぶん私と同年代だと思う。

★<Kさん>は私のダンスの先生である。私がダンスの覚えたてのころ、親切に教えてくれた。アマチュア同志のダンスパーティーで私が覚えたてのステップを試して、相手の女性に嫌われて自信を失ったときなどに、<Kさん>と踊るとうまくゆく。つまり、<Kさん>は上手な人には上手に踊り、下手な人にはそれなりにレベルを合わせて踊ってくれる。口数は少なくあまり派手なドレスも着ないが、心の優しいダンサーだった。

★私はマンボとジルバが大好き! このダンスは男性が自由に遊びながら楽しめる。<Kさん>は私を自由に遊ばせてくれた。(他のダンサーから、ピータローさんは<Kさん>とマンボを踊っているときが一番楽しそうね! と言われた)一方、タンゴやワルツなどキチンとしたダンスの時は、貴方は猫背ですよ、綺麗な姿勢で踊らなきゃダメよ、とアドバイスしてくれた。

★転勤で大阪に15年いたので、ステレオホールにはご無沙汰してしまった。東京に戻っても、結婚して子供が4人いたのでオコズカイが少なく、あまりホールには行けなかった。40代後半に管理職になり、多少交際費を使えるようになったので、お客さんを連れて、また、通うようになった。<Kさん>は昔と全く変わらず、私の相手をしてくれた。彼女と踊ると、なにか心が休まる思いだった。

★年金生活になると、定期は無くなり東京に出かける機会が少なくなった。今では、1年か2年に1度しか行けない。

★<Kさん>と私は、たぶん同じころ天国に行くのではないか? 昨日見たらさすがに顔にシワが出てきた。(ダンスホールは照明が薄暗いので、これまであまり気が付かなかった)しかし、私も顔中シワだらけ、お互いさまだ。彼女は若い頃1度結婚したらしいが、私に来る年賀状の名字はずっと変わっていない。つまり独身で<ダンサー>としてこれまで生きてきたわけだ。これまで御世話になったお客様が老齢化して、どんどん少なくなって行くのが淋しいとボヤいていた。

★私は先日、<Kさん>とつきあって以来初めて、ピンクトルマリンのネックレスをプレゼントした。(おつきあい47周年の記念です)大変喜んでくれた。二人で食事に行ったら、まるで古女房のように私の飲み物や食べ物に気を配ってくれた。(うれしかった)

★<Kさん>が天国に来たら、私がお出迎えして天国のダンスパーティーにお誘いしましょう。天国のルールでは、男性も女性もみな独身である。もう、扶養家族もいない。病気やお墓の心配もいらない。<Kさん>もダンサーをやらなくとも、天国では暮らしの心配は無い。好きな人と、好きなように踊ればいいのだ。

★<Kさん>は一見クールな女性に見えるが、天国に来たら気分が変わって情熱的なダンスを踊るかもしれない。(私はそれを期待している)「<Kさん>、天国ではおたがい自由な立場です。今日は楽しくマンボでも踊りましょう!」

(おとな愉快団! ピータロー

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