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連載エッセイ<天国よいとこ 5>

天国の鈴虫オーケストラ

★我が家の庭で鈴虫が鳴き出した。松虫が参加する。コオロギも鳴き出した。「秋の虫トリオ」のコンサートが始まった。何を訴えているのか? 「今晩は」の挨拶なのか?「お腹が空いた」と言っているのか? とくに鈴虫が激しく鳴く。もしかして、近くに彼女がいて「I LOVE YOU」と口説いているのかも知れない。どの声も同じように聞こえてしまうのは私の耳が悪いのか?

★鈴虫の生き方はナチュラルだ。お腹が空いたら葉っぱを食べる。昼間は葉っぱの蔭で昼寝、お腹にガスがたまったらオナラをする。夜になり鳴きたくなったら鳴く。冬、寒くなってくると、落ち葉の中にもぐり、眠りながら息を引き取る。死んでも、お経も、お墓も、戒名も無い。

★鈴虫にはオジイサンもオバアサンもいない。一生がわずか数ヶ月なので、年を取っているヒマが無いのだ。生まれて数日のうちに成人して大人になる。恋が始まる。女性の鈴虫は最初のうちは男性の「I LOVE YOU」を軽く聞き流す。(もっと誠意のある男性が現れるかもしれない)近寄ってきた男性の中で、最も良い声で、最も熱心に口説いてくれた鈴虫と結婚してコドモを産む。鈴虫の世界には幼稚園も小学校も無い。放っておいても、コドモはすぐ成長する。美しいムスメになると、松虫クンやコオロギクンがモーションをかけてくるが、見向きもしない。(あんな人と結婚しても良い子は生まれない!)

★鈴虫は天国に行けるのだろうか?(もちろん全員OK!)特に柏の天国には、利根川の川べりに広い田圃があり、そこが鈴虫の天国である。鈴虫の仏さまが沢山いる。川べりは静かなので鈴虫の声がよく響く。

★まず1匹がオーケストラの第1バイオリンのように鳴き出すと、すぐ第2バイオリンが追いかける。ビオラもチェロもコントラバスも一緒に鳴く。曲目は「名月」だ。シンフォニーは夜遅くまで続く。明日の晩も、明後日の晩も、とにかく気が済むまでやっている。

★鈴虫たちはなぜ鳴くのだろうか? 鈴虫の一生は、生まれて、恋をして、コドモを産んで、やがて死ぬ。きわめてシンプルで、ストレートだ。人間のように住宅ローンで何十年も苦しんだり、コドモの教育費のために家計を切りつめたりしない。「なぜ鳴くの?」「鳴きたいから、鳴いているのさ!」

★人間は天国へ来ても、いまだに下界のことが忘れられないで、いろいろ悩んでいる。鈴虫の仏さまから見ると人間の仏さまは、単純なことを難しく考えすぎているように思う。鈴虫は天国に来ても下界でやっていたように、同じ一生を繰り返すだけだ。鈴虫はみんなそうだ、生き方に迷いが無い。

★「鈴虫オーケストラ」を聞いていると、私は、反省させられることが多い。

(おとな愉快団! ピータロー

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